バフンウニの受精と初期発生の観察をやりました(1月下旬)

 2013年より高校の理科のカリキュラムが変更になり、生物では「生物基礎」と「生物」になりました。そして、「生物基礎」は全校生徒が1年生で行いますが、発生については教科書の中にありません。そして、前に勤めていた学校では「生物」は2年生の理系選択者のさらにその生物選択者のみが行うことになっています。よって、人数が今年は18名ということで、いろいろと実験のやりやすいので、生きたウニ(1月なのでバフンウニ)を購入し、受精と初期発生の様子を実際に見ることにしました。その様子を写真に撮りましたので、ご覧下さい。写真はクリックすると拡大した写真が出ます。ウニの発生については、以前ホルマリン漬けの標本を使って授業では見ていましたが、やはり生きているものの方がよく構造が分かり、写真もキレイに撮ることができました。左のメニューの「ウニの発生」の写真と比較をすると違いが分かります。ウニの発生に関しての詳しいことは、「顕微鏡の部屋」にあるウニの発生を参考にして下さい。その後、転勤となり、前任校からウニを分けてもらい今の学校でも行っています。ただカリキュラムの関係で3年生で行っています。新しいビデオカメラを買ってもらったので、精子のビデオが撮影できましたので、新しく載せました。

いずれもファイルサイズが大きいので注意!以前のビデオは顕微鏡の接眼レンズにデジカメのレンズを密着させて撮ったのでイマイチキレイではないですが。それなりの雰囲気は分かると思います。精子は新しい顕微鏡ビデオカメラで撮影しています。

箱

前日に発送されて、次の日の午前中に学校に到着しました。10℃に保った低温インキュベーターの中に入れておきました。実際に使ったのは、次の日とその次の日です。何とか大丈夫でした。3日くらいはいいそうです。

箱の中身

箱を開けると、中には湿らせてた新聞紙に包まれたバフンウニが入っていました。ちょっと個数を数えるのを忘れた。一応、管足が黄色っぽいのがメス、白っぽいのがオスと言うことですが、管足をのばしてくれないので(冷えていて)、よく分かりません。口を外すと一応生殖巣の色で何とか区別できます(時々よく分からないものもいますが・・)。

ウニの産卵と放精

口ばし(アリストテレスの提灯)をはさみとピンセットを使って取り除き、その所に0.5MのKCl溶液を1mL垂らします。すると、それぞれ雌ならば卵が(左側)、雄なら精子が(右側)が出てきます。卵はこの後海水で何回か洗います。精子は、海水中ではなく、すぐにシャーレに雄を置いて出させます(ドライスパーム)。

未受精卵

産卵した卵の入っているコニカルビーカーから卵をスポイドで吸い取って、ホールスライドガラスに入れてカバーガラスをかけて検鏡しました。未受精卵なので受精膜はありません。

受精の途中の様子

受精後、やがて受精膜が盛り上がってきます。卵のそばに精子が集まってきていますが、写真でははっきりしません。

受精卵

受精卵です。まわりに受精膜があります。バフンウニではこのようにかなり受精膜がはっきりと分かります。以前ムラサキウニでもやりましたが、そのときはあまり受精膜がはっきりしませんでした。受精膜を見るならバフンウニが扱いやすいです。しかも、冬なので気温を気にしなくも良いし。

2細胞期

受精卵からしばらく経つと最初の卵割があり、2細胞になります。

4細胞期

4細胞期です。最初の卵割面に垂直に卵割します。同じ大きさの割球になっているのがわかります。

8細胞期

8細胞期です。赤道面で卵割が起こり、同じ大きさの割球になっているのがわかります。

16細胞期

8細胞期までは同じ大きさの割球ができますが、次の卵割では異なる割球が3種類できます(動物極側から中割球8つ、大割球4つ、小割球4つ)。ちょっと写真では分かりづらいですが・・・。よく生物の問題で16細胞期の分離培養について載っていますが、あれを分けるのは難しそうです。

桑実胚

さらに卵割が進んだ状態です。桑実胚とよばれている時期です。細胞が透明なので、内部の空所(卵割腔)がよく分かります。まだ細胞は大きい状態です。

胞胚期(ふ化後)

さらに卵割が進み、卵割腔は胞胚腔という名前に変わり、胞胚という段階に入ります。胞胚の初期では、まだ受精膜の中にいます。その後、受精膜を破って出てきます(孵化)。写真では、孵化前とふ化後の様子が分かります。

胞胚期(ふ化後)

さらに卵割が進み、卵割腔は胞胚腔という名前に変わり、胞胚という段階に入ります。胞胚期にはいると、受精膜の中で回転を始めてやがて受精膜がやぶれて外に出てきます。そして繊毛を使って活発に泳いでいます。この時になると、いままで下に沈んでいたのが、ビーカー全体に散らばるようになります。

胞胚期後期

胞胚期の後期になると、植物極側の細胞が胞胚腔に落ち込み始めます。この落ち込んでいった細胞たちは一次間充織という細胞です。これらはやがて骨片を作っていきます。

原腸胚前期

胞胚を過ぎると、胚に変化が現れます。植物極側の細胞が胞胚腔の中に落ち込んでいきます。陥入が起きます。これで原腸ができますが、ウニは細胞が透明なので別に切らなくてもよく見えます。盛んに水の中を泳いでいるのでなかなか写真を撮るのが難しい状態でした。

原腸胚後期

さらに陥入が進んで、原腸が長くなっています。そして、原腸の先端部からも細胞がこぼれだしています。この細胞群は二次間充織です。原腸の先端部の方を前にして進んでいきます。やがて、この辺に口が開きます。

プリズム幼生

段々と形も変化していき、おむすび型のプリズム幼生と呼ばれる時期になります。内部に骨片がある様子が写真からも分かります。ゆっくりと泳いでいます。

プルテウス幼生

プリズム幼生から段々と角が伸びてきます。この時期をプルテウス幼生と言います。また体に色素胞が作られてきて、全体としてややオレンジ色に変化していきます。この後これが変態して稚ウニになります。これ以降はエサを与えないと飼育できません。

プルテウス幼生

プルテウス幼生では、発生の伴って腕が伸びてきます。写真の段階は4腕状態です。この後さらに腕が生えてきて6腕状態になるようです。

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