この「山の風景」は、私が大学生の頃に撮りためた白山の高山植物や伊吹山、
そして最近は生物部の活動でいろいろと里山を巡っており、その機会に撮影した写真やその他諸々の生き物の写真を紹介するページです。
里山の自然にコケの写真を追加しました(2020/05/01)。
高山植物について
高山植物は一般に高山帯に自生する植物のことを言いますが、一口に高山植物といっても亜高山帯以下にも分布するものがあり、この定義で高山植物をまとめるのは難しいです。高山帯は寒帯にあたり、生物が生息する環境としてはかなりきびしいものです。気温が常に低く、気圧も低く、風が強く、太陽光線が強いなどの特徴があります。高山帯以上では高木は生えず、低木や草本、地衣類などが見られるのみです。
高山植物はもともと北方系の植物で、暖かい気候ではかえって生息しにくい性質を持っています。新生代の第三紀(7千万年前から200万年前)に北極をとりまく北半球の一帯に今の高山植物の祖先が誕生し、これらが200万年から1万年前の氷河期に南方に移動し、各地で繁殖しました。やがて地球上をおそった氷河期が終わると、地球上が暖かくなってくると、これらの植物は生息しにくくなり、再び北へ追いやられることになりました。低地に生えていたものは絶滅し、高山に移動したものだけが生き残り、現在の高山植物になったと考えられています。
気温は海抜が100m上がるごとに約0.6度下がると言われていますので、平地と比較して気温が低く、雪に覆われる期間も長いため、植物の生育可能期間が夏の間の3〜4ヶ月に限られています。そのために高山植物は多年草が多くなっています。
高山植物の名前には「ミヤマ」や「タカネ」とつくものが多く、これらはそれぞれ「深山」「高嶺」を示しています。また「ハクサン」のつくものも多く、これは白山で発見された植物が多いことを示します。
植物を図鑑で調べる場合に知っておいた方がよい用語がいくつかあります。それらについては、こちらへどうぞ。
標高による違い
標高による違いの説明
高山帯(alpine belt) 中部地方では標高2500m以上(積雪の多い場所ではこれよりも低い−白山では2200mから2300m)。森林限界(これ以上では高木が見られないという境界線)より上で、背の低い木としてハイマツが生えており、その他多くのきれいな花たち(いわゆるお花畑)が我々を迎えてくれます。
高山帯(Alpine Belt)は砂礫・岩などが存在し、非常に保水力の弱い土地と積雪量が多く湿った土地などいろいろな環境があります。そのため、これらの環境に適応した様々な植物が見られます。高山帯では背の高くなるような樹木は見ることができず、樹木としてはハイマツ(
Pinus pumila)が生えています。高さは1から2メートルぐらいで、斜面に沿って横に這うように生えています。積雪のあまり多いところには生えておらず、ハイマツの生え方により、大方の積雪量を知ることができます。ライチョウなどが多く見られるのもこの地帯です。なお、白山には過去にはライチョウがいましたが、現在では見ることはできません。この高山帯に生える植物には名前の頭に「ハクサン」とつくものが多く、これは白山が古くに開かれた山であることを示しています。
ハイマツ林
ハイマツ(マツ科マツ属
Pinus pumila)は高山帯に生える雌雄同株の常緑の低木で、高山帯を特徴づけるものです。山に登っていってハイマツが現れると、ああ高山帯に来たなという気分になれます。新しい火山である富士山にはありません。日当たりのいいところを好み、乾燥にも強いため、砂礫地などでもよく生育します。尾根筋や斜面では、本当に地面を這って広がっている様子が見られます。
ハイマツの成長 |
ハイマツは枝が地につくと、そこから根を出し、先へ先へとのびて自分の領域を拡大していきます。古い株では根元からしだいに枯れていって、その後には白骨のようになった枯れた幹や枝を残します。ハイマツが密生した林では暗いため、ハイマツの種子は発芽できません。そのため、ハイマツ林は1代で終わります。ただ、このハイマツの種子などはホシガラスの好物であり、この鳥が球果ごと運ぶため、場合によっては環境のよいところに種子が落ちることがあります。発芽したばかりの実生は6〜7cmほどで、約10個の子葉がつきます。ハイマツの成長は遅くて、10年たっても幹の長さは5〜9cm、直径は5mmくらいにしかなりません。30年くらいたってやっと長さが1m、直径1.4cmほどになります。 |
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参考文献(日本の高山植物 山と渓谷社) |
高山帯のお花畑
- 高茎草原
- 強い雪崩の起きやすい斜面などでは、樹木が生活できないため、地上部が毎年生え替わるような草本が生えています。これらの草原には幅の広い葉を持った大型の草本が多く見られるので広葉草原とも呼ばれます。この草原を構成する植物の数は多くて、しかも1種類が優占して生えるようなことはあまりありません。これらの草原を特徴づけるものはセリ科の植物ですが、どれもこれも同じような感じなので分類は結構難しいです。
- 湿性お花畑
- 雪田のまわりは、絶えず雪解け水などが流れ込むので、湿り気のある土地で、しかも有機物が集まってくるので栄養分に富んでいます。こういった場所にはまた特色のある植生が見られます。ただ斜面のところでは、雪解け水などが流れ去り、かなり乾燥します。また雪解け水とともに土壌が流出するため土の質もあまりよくありません。このようなところでは雪解けと同時に光合成できるような常緑の小低木が見られます。
- ハイマツ帯
- 高山帯の下部ではハイマツの成長がよく、ハイマツが1m以上の高さになり、ハイマツの樹海を作ります。このような群落にはハクサンシャクナゲなどが混在します。これらのハイマツの林縁などでは特有の植物が見られます。
- 瓦礫地帯
- 高山の非常に風当たりの強いところでは、夏乾燥しやすく、冬は雪が積もらないのでまともに寒気にさらされるといった厳しい条件です。もっとも厳しい環境のもとではイネ科の植物が主体となります。すこし条件が緩やかになると、丈の低い小低木などが生えるようになります。これらの植物は多くが常緑の小低木です。