読書の部屋

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 ここでは、私が勝手に独断と偏見で選んだいきもののに関する本です。当然のことながら自分で読んだ本しか載せていません。職業上いろいろと「いきもの」に関する本は読んでいますが、このごろは雑用が多くてちょっと読んでいる時間がありませんので、結構古い本が多いかもしれません。また人間も「いきもの」の1つなので、人間が書いたものはすべて「いきもの」の本になるかもしれません。なお、本の値段は各本を買った時点の値段であるので、現在はいくらなのかは分かりませんのであしからず。なかには、絶版になってしまっている本もあります。


55.はたらく細胞1~5 清水 茜著 月刊少年シリウス 600円(税別)
 
2年ほど前に本屋に行ったら、漫画の所に山積みになっていました。ちまたでは結構流行っていたみたいです。中身が面白そうだったので、早速買ってきてみたところ、赤血球と好中球がメインで出てきて、さらにT細胞やB細胞、がん細胞などと授業でやっているものがどんどんと出てくる。これは授業で使えます。教科書を読んでいてもなかなか理解しづらく、いつも体の中をお城に例えながら話をしているのですが、映像で表されているのでイメージとして残りやすいようです。ということで、現在(2017年9月現在)、5巻まで出ています。これからもさらに出てくるようなので、高校生の人たちは生物基礎の範囲なので、理系の人も文系の人も読んでみるといいでしょう。教科書に出てくる細胞以外にもいろいろ出てくるので勉強になりますよ。アレルギーの話などもあったり、善玉菌や悪玉菌などの話もあって盛りだくさんです。
54.身近な動物を使った実験2 プラナリア モノアラガイ ナメクジ ミミズ 鈴木範男編 三共出版 1700円+税
 プラナリアを部活で研究していていろいろと試行錯誤をしていますが、学校の図書館で同僚の先生が見つけてきました。いろいろと詳しく実験方法が載っており、非常に参考になる本です。高校レベルでの部活動において生徒に読ませながら考えさせるといいと思います。
53.クマムシを飼うには 博物学から始めるクマムシ研究 鈴木 忠・森山和道 地人書館 1400円+税
52のクマムシの本と同じ人の話です。クマムシを飼うにはというタイトルに引かれてアマゾンで買ってしまいました。内容は鈴木 忠さんと森山和道さんの対談のようなものです。ただ、近頃の生物学はどんどんと細かな方向に進んでいて、何でもDNAというような風潮になっています。鈴木さんはそのような中でいわゆるナチュラリストのような研究をされています。自然界には面白い生き物がいる。それを知るのが楽しい。今の大学などではなかなか研究費がもらえないような研究ですが、こういった研究に多くの資金がくるような国が本当の成熟した国のような気がします。
52.クマムシ?!小さな怪物 鈴木 忠 岩波科学ライブラリー122 岩波書店 1300円+税
 HPにも載せてありますが、クマムシに関する本です。イラストなども結構面白いので、どうでしょうか。実は、生徒の課題研究のためにクマムシを飼育したいと思っていろいろと探していたらこの本がありました。クマムシについてのことを研究する上では一度読んでおくといいのでは。
51.へんないきもの 早川いくを バジリコ株式会社 1500円
著者が普段見慣れない、聞き慣れないいきものについて面白おかしく紹介している一冊です。理科系のお仕事に就いている方なら大体は知っているかも知れませんが、中学生の視線から見れば、とてもおもしろかったです。とにかくこの地球上には日々絶滅してしまう生物がいるのにもかかわらず、とてもおもしろい生物がたくさん蠢いていることがわかりました。それに何より、生物学というか、とてもおもしろいものだと思いました。ぜひ。(受験生さんからの紹介です。ありがとうございました)
50.いまはもう高校教師をやめた 盛口 満氏の本はどれも面白いと思います。
量が多いのでインターネットで検索してください。
生物教師らしい最初の 「飯能博物誌」関係のものからだんだん骨つくりにはまる 最後の著作まで著者の歩みがたどれます。私は、どちらかというと素人生物学として自分のスタンスに自負をもっていましたが、最後前2つ目の「ネコジャラシのポップコーン」ではそうした内容でも完全に脱帽させられました。(愛知の鈴木さんありがとうございました。具体的な紹介があればまた御願いします。kazuhiro)。
49.ブラックバスがメダカを食う 秋月岩魚 著 宝島社新書 660円 + 税
 ブラックバスが日本の湖や川に住み、そして多くの在来種が減ってきている。これらの原因はブラックバスが在来種の稚魚などを食べてしまうことがある。そして、もともとはこれらのバスを放流した人たちがいる。この外来種による生態系破壊の問題について書いている。
48.生物は重力が進化させた 西原克成 著 講談社ブルーバックス900円
 ラマルクの考えを重視して物理的な力によって生物は進化をなしていったとする考え方がユニーク。ちょっと変わった進化の世界に浸りたい人にはお勧めの一冊です。(曽我部さん。本の紹介ありがとうございました。kazuhiro)
47.ホット・ゾーン 恐怖!致死性ウイルスを追え! リチャード・プレストン 小学館文庫 657円+税
 この本はノンフィクションで、エボラ出血熱ウイルスとその征圧作戦の様子をまとめたものです。アメリカのレストンという町で、実験動物のとしてのサルを販売しているモンキー・ハウスで、エボラウイルスによるサルの大量死がありました。そのモンキー・ハウスでどのようにしてエボラウイルスを制圧したのか、その過程を克明に記した本です。
46.清潔はビョウキだ 藤田紘一郎 朝日新聞社 1400円+税
 この本はタイトルがなかなかと意表をついたものですが、内容はそのとおりです。朝日新聞で連載していた「清潔ニッポン健康学」をまとめ、それに追加したものですので、読んだ人もいるかもしれません。日本の無菌化が感染症への「弱さ」をもたらした、また花粉症やアトピーなどを増加させたという話です。我々の体には共生菌がすんでいますが、それをも殺してしまう現在、病原菌が入り込みやすくなっているのです。これらの「排除」はそれをすすめていくと「異物」の排除になり、自分の臭いまでも排除するようになってきています。それがやがて自分と違っているものを「排除」することになり、社会的な問題となっていくと警鐘をならしています。読みやすい本ですよ。
45.ネズミに襲われる都市 都会に居座る田舎のネズミ 矢部辰男 中公新書 680円+税
 これまた本の題名は何かのパニック映画のようですが、まじめな本です。内容は前の本とは違っていわゆる家ネズミの話でとくに日本の都市で増えているクマネズミの話が中心です。クマネズミはいわゆる最先端のビル(情報ケーブルが走り回っている)において大きな影響を持つ。つまりこれらのケーブルを囓ってしまい使い物にならなくなるのである。そしてこれらのネズミをどうすれば退治できるのかといったことになるだが、人間とネズミの知恵比べである。
44.ネズミの超能力 今泉忠明 講談社 1300円+税
 本の題名は何かしら意味深ですが、内容はネズミの生態の話です。ネズミなどの小哺乳類を研究している著者がネズミの本当の姿を知ってほしくて書いた本です。私もネズミを研究してきたので分かるのですが、人にネズミを研究していますというと大体がなぜネズミなんてと言います。しかし、野生の野ネズミを自然のままの姿でみたらきっと感動します。この本にはそのネズミウオッチングの方法も書いてあるのでぜひやってみては。
43.メス化する自然 環境ホルモン汚染の恐怖 デボラ=キャドバリー 集英社 2000円+税
 いわゆる環境ホルモンの話です。「奪われし未来」と同様に、現在問題になっているホルモン攪乱物質の話ですが、前著に比べてより科学的に書かれているので参考にしやすい本です。これからどうなっていくか分かりませんが、現代人として読んでおいた方がいいでしょう。メス化する自然というタイトルからも分かるとおり、生物界では奇妙な現象が沢山そして静かに進行している。オスがメスに性転換していったり、生殖不能になってしまった生物など、そしてヒトでは精子の数が減少していくなどの影響が出ています。これらの現象について著者は多くの科学者の取材によって明らかにしようとしている。
42.西表島 ヤマネコ騒動記 横塚眞己人 小学館文庫
 この著者はカメラマンです。熱帯地方の生態写真においては有名な人で、その人がまだ無名だった時代に、西表島のイリオモテヤマネコの子連れの写真を撮ろうとしていろいろと奮闘した様子が書かれています。誰もいない森の中でネコを求めてじっとしていると五感が研ぎ澄まされていくなどというようなところは、ネズミを観察しようとしてじっとしていた自分を思わず思い出してしまいました。一気に読めてしまう本です。
41.「大学病院の掟」 柳瀬義男 講談社α+文庫 600円+税
 一般の人間にとって病院というところは一種恐いところです。この本は大学病院に医局員として勤務していた著者が、大学病院の一般常識とはかけ離れた様子を書いたものです。これを読むとちょっと大学病院にはいけないななどと考えてしまいます。
40.「生物の種多様性(バイオダイバーティ・シリーズ1)」(岩槻邦男・馬渡峻輔:編集、裳華房、4000円+税)
 生物の多様性がタイトルになっていますが、その多様性を論じるために必要な分類学の基礎や、種分化の研究について、脊椎・無脊椎動物や植物についてのいろいろな研究例を、多くの研究者が解説した本です。多少専門的なので、生物に興味のある人ならば面白く読めると思います。私がよくお世話になっているカイミジンコの先生が1つの章を担当していますが、わかりやすく書こうと努力されているのがよくわかります。(これまた小沢さんから。たくさんの投稿ありがとうございます)
39.「Field Selection no. 20 化石」(東海化石研究会:編集、北隆館、1800円ぐらい)
 手前みそですが、知り合いの人に頼まれて、私の専門であるカイミジンコの化石について1ページだけ書きました。野外用の図鑑ですが、たくさんのきれいな日本の化石の写真が載っているので、是非一度手に取ってみてください(ほとんど宣伝・・・)。(これまた小沢さんからです)
38.「生命と地球の歴史」(丸山茂徳、磯崎行雄:著、岩波新書、no. 543、660円+税)
 生命の40億年の歴史を、地球の46億年の歴史上で起こった出来事(例えば、大陸の移動やそれを引き起こした、スーパープリューム)と生命の絶滅を結びつけて壮大に論じている本です。どこまで本当かはわからないところもありますが、近い分野の学問に携わっている一人としては、その考えのスケールの大きさには感心してしまいます。(これまた小沢さんからです)
37.「山の自然学」(小泉武栄:著、岩波新書、no. 541、660円+税)
 日本の北から南までの、山の地形や植物の分布の特徴が、25の山について述べられている本です。地学を学びながら白山には何度も登っていたのに、「構造土」という地面の模様が、この山では有名だったとは全然知りませんでした。(これも小沢さんからです。)
36.「貝のミラクル〜軟体動物の最新学」(奥谷喬司:編著、東海大学出版会、2500円)
 生物の中でも親しみやすい貝を使って、進化や生態などについて、最近の研究でどのようなことがわかってきているのかを、18人の第一線の生物・古生物学の研究者がわかりやすく解説した本です。1つの章が20ページ前後なので、読みやすいです。(再び小沢さんありがとうございました。Kazuhiro)
35.ワンダフルライフ スティーブンJグールド(渡辺政隆/訳) 早川書房 2600円ぐらい
 過去の学者の奮闘ぶりをまじえながら、何億年も昔の摩訶不思議な生物を、現在の研究者がどのように復元し、またそこから何を読み取るのかを語ったやや厚い1冊。生物の系統樹の根っこは。別に1つの点から始まらなくても良いではないかという、発想の転換を示した興味ぶかい本です。同業者の私には、いろいろと考えさせられる1冊でNHKの番組「生命」に出ていた、おかしな格好の生物がたくさん出てきます。した。(再び小沢さんありがとうございました。Kazuhiro)
34.太古の海の記憶/オストラコーダの自然史 池谷仙之&阿部勝巳 3700円+税 東京大学出版会
 最近、自保研OBのメーリングリストの入ったばかりの、20代の大学院生(地学科、古生物学専攻、D2)で、小沢といいます。どうぞよろしく。面白そうなホームページがあったので、覗いてみました。いくつか本を紹介したいと思います。私が専攻している、オストラコーダという1ミリぐらいの甲殻類(介形虫ともいいます。ウミホタルの同類です。)を調べると、生物の進化や海の生物の生態について、こんな小さな生物からどんなことが語れるのかを、手紙のやりとりというわかりやすい形式で、できるだけわかりやすく解説した本です。一度手に取ってみてください。雑誌「遺伝」にも紹介されました。(ありがとうございました。またよろしくお願いします。 Kazuhiro)
33.水俣病は終わっていない 原田正純 岩波新書 430円
 水俣病のあゆみから始まって、水俣病患者であることの認定の問題。なかなか認定されず、死んでしまってから認定されていく患者たちの話。そして、母親の胎内で水銀に侵され、生まれつき水俣病になってしまった子どもたち。そういった問題について書かれています。これもこれからの問題として考えていく必要のあることでしょう。
32.水俣病 原田正純 岩波新書 430円
 これも古い本ですが、水俣病のことについて詳しく書いてあります。水俣病がなぜ起こったのか。そして、水俣病が発見されてから有機水銀が原因物質であると分かるまでになぜ時間がかかったのか。これらの水俣病の問題点(これは水俣病以外の公害病にも当てはまりますが)をついた本です。
31.苦海浄土 石牟礼道子 講談社文庫 380円
 古い本ですが、水俣病に関して有名な本です。水俣湾の魚が外海へ出ていくのを防ぐ網が撤去されて、水俣病に関しては段々と人々の記憶の中から消えていこうとしていますが、世界でも未曾有の公害病である水俣病は忘れてはいけないものでしょう。このような犯罪が過去にあったことをしっかりと見据えておくことが必要なのではないでしょうか。ということで水俣病に関する本をあと2冊ほど載せておきます。
30.アユの話 宮地伝三郎 岩波新書 480円
 アユはなわばりを持つ動物として有名です。高校の生物の教科書などには必ずと言っていいほどこのアユのなわばりの話(あるいは図)が載っています。その図と同じものがこの本にも載っています。ということでちょっと嬉しくなりますが。話によるとこの本はこの著者が書いたものではないというような噂もありますが、まあ真偽のほどは知りません。読んでみると結構面白いですよ。
29.北加伊エゾジカ物語 北海道の環境破壊史 藤原英司 朝日新聞社 1800円
 北加伊とは北海道のことです。江戸時代は北海道はまだアイヌの土地でした。この江戸時代に松浦武四郎という人が北海道を調査した記録をたどりながら、北海道の自然がいかにして壊されていったか、そしてそれとともにアイヌの土地がいかに奪われていったかといった形で書かれています。自然に興味のある人も面白いですが、日本の近代史に興味のある人にもいい本です。ちなみにこの本は朝日ジャーナル(今はなくなってしまいましたが・・・青春時代の雑誌ですね。こういう雑誌がまた出ないだろうか)に連載されていたものをまとめたものです。
28.カラスはどれほど賢いか 都市鳥の適応戦略 唐沢孝一 中公新書 580円
 この本は題名のとおり、カラスに関する本です。カラスは昔から賢いトリであると言われていますが、著者はそのカラスについてどのように行動しているのか、どこを塒にしているのかなどを調べました。都心ではカラスの害が結構あるようで、カラスに関してはその害をいかにして防ぐかが問題となっています。カラスの害を防ぐためには当然その生態を知る必要があります。この本を読めばカラスが身近に感じられるかもしれません。
27.遺伝子組み換え食品の恐怖 渡辺雄二著 KAWADE夢新書 河出書房新社 667円+税
 この本は現在知らないうちに我々が食べているかもしれない遺伝子組み換え食品の話について書いてあります。現在害虫を殺すようなダイズ、除草剤に耐えるトウモロコシなどが作られ、知らないうちにそれが輸入され、そして知らないうちに食べているらしいです。これらの食品が果たして安全なのか。そして、これらの食品によって日本の農業が壊滅的な被害を被る状況になる可能性もありえます。これらの話がいろいろと載っているので読んでみてはどうでしょうか。
26.奪われし未来(OUR STOLEN FUTURE) シーア=コルボーン・ダイアン=ダマノスキ・ジョン=ピーターソン=マイヤーズ 翔泳社 1800円+税
 この本はいわゆる環境ホルモンの話です。人間が作り出した化学物質がホルモンのような働きをして、様々な動物たちの繁殖に影響を与えているということが分かってきました。例えばDDTやダイオキシンなども性ホルモンの働きを錯乱し、ある動物ではオスが生まれてこないとか、メスが生まれてこないとか、人間でも男性の精巣に影響を与え、段々と精子の数が減ってきているなどの影響が出ているようです。それらのことについていろいろと書いてある本なので、一度読んでみるといいと思います。
25.ダーウィン以来−進化論への招待− スティーヴン・ジェイ・グルード ハヤカワ文庫
 この本は断続平衡説を唱えたグルードの進化論の本です。ナチュラル・ヒストリー・マガジンにおいて1974年1月号からエッセイの連載をはじめ、それをまとめたのが本書である。進化論だけでなく、自然認識と人間観といったものまでその主題となっている。
24.ビーグル号航海記(上・中・下) チャールズ・ダーウィン 岩波文庫 450円+税
 この本は有名なダーウィンが進化論を思いつく原因となったといわれているビーグル号での航海の記録です。有名なガラパゴス諸島での話やいろいろな場所の様子が書かれています。種の起原は読むのが疲れますが、これはさほど疲れません。
23.脊椎動物の歴史 アルフレッド・S・ローマー どうぶつ社 4900円+税
 この本は、地球上にどのようにして脊椎動物が現れ、そしてどう進化してきたかが書いてある。この本と、以前に紹介した奥野良之助氏の「魚陸に上がる」の2冊を読めばきっとあなたも脊椎動物の進化について人に話せるようになるかもしれない。
22.遺伝子・大疑問 ベーシックな知識からクローン人間の可能性までそのすべてに答える本 別冊宝島 933円+税
 クローン羊のドリーがイギリスで生まれ、大きな話題となりました。そして、人間でもクローンが作れるのではないかという恐れを多くの人たちが感じています。まあ、人間で作れるかどうかは分かりませんが、原理的には可能でしょう。現在は遺伝子操作によって良かれ悪かれ多くの生物が作られています。では、現在の遺伝子操作はいったいどうなっているのか。これからどうなっていくのか。それらのことが多くの人たちの論評として載っています。結構面白いですよ。
21.生物はなぜ進化したか 現代進化論の盲点をつく 浅間一男著 講談社ブルーバックス 660円
 進化論としては総合説(突然変異と自然選択)が主流を占めているが、これでは大進化が説明できないといわれている。著者は植物の化石の移り変わりから「生長遅滞説」を唱えている。この本では、進化論の歴史と自説の「生長遅滞説」の説明をしている。進化論の入門書としてもいいかも。
20.最新・恐竜進化論 別冊宝島 1200円
 ジュラシックパークが公開され、世界中・日本中が恐竜ブームになったときに出た本。現在の「恐竜学」において分かってきていることについてまとめてある。
19.誤解しているあなたのための 新釈動物読本 別冊宝島 1010円
 動物たちの謎に取り組んだ本。いろいろな「なぜ」「なに」について書いてある。動物行動学についての疑問も提示している。まあ、いきものについて考えたい人にとっては「読むといいかも」。
18.自然観察者の手記1・2・3・4 岩田久二雄著 朝日選書 960円
 著者は主に昆虫のハチ類を研究している人で、それ以外にも多くの昆虫を研究している。内容はファーブル昆虫記のような感じで、自然観察の醍醐味というものを知らせてくれる本である。きっとこれを読むと何か調べてみたい、観察してみたいという気分になるのではないかと思う。
17.死んだ魚を見ないわけ 河合智康著 情報センター出版局
 海には膨大な数の魚が住んでいる。しかし、海に潜っても目にはいるのは生きていて元気に泳いでいる魚しかいない。しかし魚もいきものなのでやがては死ぬはずである。なのになぜ死んだ魚を見ないのか。この謎に挑んだ本。
16.イワシと逢えなくなる日 河合智康著 情報センター出版局
 現在イワシはたくさん捕れる。しかし、1960年代は非常に貴重な魚だった。そのため料理屋などでも高級魚扱いであったらしい。しかし、そのころイワシがいなかっただけでサンマは大量に捕れた。このように、海の魚、特に回遊魚では大規模に魚種が交替するという現象が見られる。これがなぜ起こるのかということをいろいろな研究をもとにつきつめていく本。
15.進化論を見直す 臼渕 勇著 講談社 1200円
 進化論については現在、総合説(突然変異+自然選択説)が主流である。そして、ラマルクが唱えた「獲得形質の遺伝」は否定されている。この本では、ガン細胞の抵抗性の研究から獲得形質が存在することを述べている。現在獲得形質の遺伝が存在するというと、人格まで否定されるような風潮が存在するが、それをあえてやったという点で私は好きである。
14.ニホンザルの生態 伊沢紘生著 どうぶつ社 1800円
 ニホンザルの生態は餌付けを行って調べられてきたが、著者は雪深い白山山麓で自然のニホンザルを観察してその記録をまとめた。そして、ニホンザルの群れにはリーダーはいないなどの今までの研究で常識になっていたことを覆していく。ということで、サルに興味がない人でも面白いと思います。
13.日本環境報告 本多勝一著 朝日文庫
 11の釧路湿原と同様に現在の日本の環境政策の問題をついた本である。南アルプスのスーパー林道問題、屋久島のスギの問題。それにともなって林野行政のあり方。白神山地・知床・長良川河口堰・二風谷ダム問題など様々な問題がこの日本に存在することを改めて思い知らされる。
12.猿学漫才 水原洋城著 光文社カッパ・サイエンス
 漫才とありますが、別に漫才ではありません。著者は日本の猿学をリードしていった人で、話は猿の一研究者が猿の群れを追いかけていて、あるハナレザルと出会ってから始まる。なぜか人間の研究者と、ニホンザルであるハナレザルが会話をするという舞台設定が何とも言えず面白い。内容は現在のサル学を批判するような内容である。
11.釧路湿原(日本環境の現在) 本多勝一編 朝日文庫
 本多勝一氏は朝日新聞の記者だった人で、様々な本を書いていますが、環境問題についても多くの本を書いています。日本の環境の現在のあり方を、釧路湿原を題材に書いています。釧路湿原は非常に大きな湿原で、釧路市という都市のそばにあるということからも特異的な湿原です。日本ではリゾート法という悪法によって多くの貴重な自然が失われようとしています。これらの日本の環境政策の様子を知るのにも良いでしょう。
10.動物哲学 ラマルク著 小泉 丹・山田吉彦訳 岩波文庫 450円
 この本はラマルクという人の本で、学生時代に早くも絶版になっていた本です。なんとか探し出して買いました。もう一般には売られていないかもしれません。この本はダーウィンに先駆けて進化論を唱えたもので、高校の生物の教科書にも「用不用説」などで出ています。現在ではラマルクの説はあかんということになっていますが、どうかなと疑問を持っています。キリンの首がなぜ長くなったかということが教科書などにありますが、その辺のこともちゃんとこの本に載っています。ただ古い本なので漢字がすべて旧漢字で結構読みにくいかもしれません。大切な本の1つです。ラマルクについての詳しいことはこちらへ
9.種の起原(上・中・下) ダーウィン著 八杉竜一訳 岩波文庫 各400円
 言わずも知れた本である。生物に関係する人は一回は読むべきであると言われている本である。しかし、生物学者の中でもすべてを読んだ人はあまりいないと言われている本である。とにかくダーウィンは裕福な家に生まれ、一生研究だけをしていた人で、とにかくたくさんの資料を持っており、それらの具体的な資料がどんどん出てきて読む方は疲れてしまうという本である。この本はもともともっと大きな本になるはずであったのが、ウォレスが自然選択説を口に出したために急いでまとめて出したと言われている。もし慌てて出さなかったらもっと読みにくい、とてつもない本になっていたはずである。ということでウォレスに感謝。この本については原著も出ています。The Penguin English Library より CHARLES DARWIN "THE ORIGIN OF SPECIES" という題で出ています。値段は$3.95(U.S.A.)です。
8.おはよう寄生虫さん 亀谷 了著 講談社α文庫 660円
 著者の亀谷氏は寄生虫館館長でもあり、この本には様々な寄生虫の話が載っています。最初のサナダムシの話などでは2・3メートルのサナダムシを取りだした話が載っていたりと、結構具体的で気持ち悪い。グルメの人はこういった寄生虫に取り付かれやすいので気をつけましょう。
7.魚づくし (続々)真説・動物学体系 別役 実著 平凡社 1500円
 前掲の鳥づくしの続編。本の内容は同様のもの。読めば分かります。
6.鳥づくし (続)真説・動物学大系 別役 実著 平凡社 1400円
 別役 実氏は知っての通り有名な劇作家です。もともとこの本は平凡社から出ていた「アニマ」という雑誌(動物の生態やきれいな写真が載っていた本です)に連載されていたものです。いきものの本というよりは読み物といった感じでしょうか。世の中の学者さんを皮肉ったような口調が堪りません。常識に囚われがちな現代人にはいいのではないでしょうか?
5.金沢城のヒキガエル (競争なき社会に生きる) 奥野良之助著 どうぶつ社 2200円
 著者は9年間にわたり石川県の金沢城跡にすむヒキガエルの指を切り、その生活の様子を克明に記録した。それらの記録をもとにまとめたのがこの本である。片足のないヒキガエルが何年も生き続けるということから、一般に言われているような常に生物たちは生存競争をしているということに疑問を持ち始めた。そして生物の中には競争とは無縁のものもいるんだよということを述べている。競争社会という中にいる人間としてはホッとする話であるし、こういう競争のない社会に生きたいものである。
奥野良之助氏の本がたくさんありますが、大意はありません。お金をもらっているわけでもありません。ただ大学時代の担当教官であったからです。
4.ダーウィン入門 ジョージ・G・シンプソン著 奥野良之助訳 どうぶつ社 2200円
 著者のシンプソン氏はアメリカ古生物学会の重鎮で、ダーウィンを心から敬愛している人物である。ダーウィンの「種の起原」は読んでみると非常に疲れる。これほど有名な本で、あまり読まれていないのはマルクスの「資本論」ぐらいではないだろうか。ということで、この本はそのダーウィンの進化論を分かりやすく、またダーウィンという人間についてや、進化論がいかにしてできてきたなどの話が書いてある。これを読んでから「種の起原」を読んでもいいのではないでしょうか。
3.魚陸に上る 魚から人間までの歴史 奥野良之助著 創元社 2500円
 この本は副題にあるように魚から人間までの歴史(脊椎動物の歴史)を分かりやすく示したものである。書いてある内容は堅い話なのだが、脇道に逸れた部分が面白く(筆者の名誉のために付け加えておくが、内容も面白い)、特に魚がなぜ陸に上ったのかという佳境部分は非常に興味深く面白い。
2.生態学入門 奥野良之助著 創元社 1500円
 この本は生態学入門などという題名がついているけれども、中身はあまり入門ではない。前著の中で書かれていたように現在の生態学について批判的な著者がその辺りのことを詳しく述べている。現在騒がれている人口問題についてもあらためて考えなければならない部分があることをこの本を読むことで知るだろう。生態系という概念の危うさなども理解できるに違いない。
1.磯魚の生態学 奥野良之助著 創元新書14 700円
 その題名の通り、磯魚(和歌山県の白浜)の生態を記した本。それはそれで面白いのであるが、最後の章の「二つの生態学」が一番面白い。公害問題が出てきたときに、生態学者は我こそが公害問題を解決できると全面に出てきたが、結局は解決できなかった。公害問題も「生態学」の理論を振り回さずとも、公害を出している企業が公害を出さなくすればなくなる。だから、著者はそういった生態学ではなく、公害には役に立たないけれどももう一つの生態学がありえるのではないかと述べている。

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