ネズミの組織の顕微鏡写真
大学時代に作成したネズミの組織の永久プレパラートがあったので、その写真を撮りました。作成したのは15年以上前ですが、染色もそれほど褪せることもなくなかなか綺麗に見えました。このプレパラートは、ネズミを解剖し、組織片を取り出し、それをパラフィンに包埋してミクロトームという薄く切る機械で切り出し、その後パラフィンを有機溶媒で溶かし、脱水・染色をし、バルサムで封じたものです。冬場に閉め切った実験室で、ストーブをたきながらキシレンを使っていたので、段々と気持ち悪くなっていったのを覚えています。まあ、いい思い出ですね。
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小腸断面(対物4倍 接眼10倍)
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小腸断面(対物10倍 接眼10倍)
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ネズミの小腸の断面の写真です。ヒトの小腸の断面とそれほど変わらないはずです。上の写真が小腸の断片の全体像で、柔突起の様子がわかると思います。消化管は食道・胃・十二指腸・小腸・大腸とありますが、ほとんどの栄養分は小腸において吸収されます。柔突起の中には毛細血管が走っており、吸収された栄養分(主に糖類やアミノ酸など)が入っていきます。また、リンパ管(乳び管)もあっておもに脂肪が吸収されていきます。血管に吸収された栄養分はすべて肝臓に行きます。この肝臓において糖類などは変化を受け、貯蔵物質に変えられたり、アミノ酸などはタンパク質に変えられたり、そのままアミノ酸として全身に送られていきます。リンパ管に吸収された脂肪はそのままリンパ管内を移動し、やがて左鎖骨下静脈と合流し、血液中に移動します。
このように、小腸は栄養分を吸収する場ですが、なるべく多くの栄養分を吸収するために表面積を広くしているわけです(ヒトでは吸収表面積は約200m2に達します)。また、小腸からは腸液という消化液も出されます。
柔毛付近を拡大すると、さらにいろいろな細胞を区別することができますが、写真ではいまいちよく分かりません。また柔突起の根本付近には消化酵素を出していく腺も見られますが、これまた写真ではいまいちよく分かりません。
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膵臓断面(対物10倍 接眼10倍)
膵臓(すいぞう)の断面です。膵臓は膵液という消化液を合成・分泌する臓器です。消化液を分泌するような器官を外分泌腺と呼んでいます。膵液は十二指腸に出される消化液です。このように膵臓は消化に関わると共に、実は糖尿病とも関連があります。膵臓の細胞の中には、インスリンやグルカゴンというホルモンを作り出す細胞があります。このうちインスリンは血糖量を下げるホルモンとして有名です。このホルモンが出ないと血糖量が減少せず、尿中にブドウ糖が出ていくことが起き、これが糖尿病という症状を引き起こします。このホルモンを作る細胞たちは膵臓の膵液を作る細胞たちの中に浮かんだ島のように見えるので、ランゲルハンス島と呼ばれています。インスリンを作り出すのはその中のβ(B)細胞です。写真ではそのランゲルハンス島を撮影したと思います。たぶん。
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精巣断面(対物4倍 接眼10倍)
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精巣断面(対物10倍 接眼10倍)
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精巣の断面写真です。精巣は長い管(細精管)からできており、管を作る細胞からたくさんの精子が作られています。ここでは管の外側の細胞から段々と精子が作られていく様子が見られます。下側の写真の管の中心部に見られる楕円形の濃いものが精子の頭です。精子や卵が作られる分裂は減数分裂という分裂で、この分裂によって染色体数は体細胞の半分になります。たとえばヒトでは体細胞の染色体数が46本ですから精子では23本になっています。
図にあるセルトリー細胞は、精子になるための細胞たちに栄養分を供給する働きを持っています。外側にある精原細胞が一番元になる細胞で、これが一次精母細胞となり減数分裂に入ります。減数分裂を行い、二次精母細胞、精細胞と変化し、最後に精細胞は精子に変態していきます。その様子が写真でも見て取れると思います。
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肝臓断面(対物4倍 接眼10倍)
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肝臓断面(対物10倍 接眼10倍)
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肝臓の断面写真です。小腸の所でも書きましたが、小腸からの血管はいったんこの肝臓に入ってきて、肝臓の中でいろいろな化学反応を受けていきます。肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、なかなか肝臓の病気になっても自覚症状が出ません。しかし、肝臓は様々な働きを持っており、非常に重要な臓器です。ではその働きのいくつかを。(1)解毒作用・・・体の中に入ってきた毒物などを分解する働きを持っています。(2)尿素の生成・・・タンパク質を分解すると有毒のアンモニアが生じます。これを毒性の弱い尿素に変える働きを持っています(オルニチン回路)。(3)血液中のアルブミン合成・・・アルブミンとはタンパク質で、血液の浸透圧調節に関わります。(4)胆液の合成・・・胆液とは脂肪を小腸から吸収する場合に吸収しやすい形にしたり、あるいは消化液が働きやすいようにする働きがあります。胆液は胆嚢に蓄えられ、胆管を通って十二指腸に出ます。この胆管に石がたまるのが胆石です。(5)体温の生産・・・我々哺乳類は恒温動物です。気温が低くなっても体温が変わりません。ということは、体の内部で熱を作っているわけですが、肝臓は筋肉に次いで発熱量の多い臓器です。下の写真の1つ1つの細胞が肝細胞で、真ん中にある空間は肝臓内を走っている血管(中心静脈)です。
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腎臓断面(対物4倍 接眼10倍)
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腎臓断面(対物10倍 接眼10倍)
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腎臓の断面です。腎臓はヒトでは背中側の腰のあたりに1対存在するこぶし大の臓器です。外の方から皮質・髄質・腎盂(じんう)となっていて、皮質の部分の写真を撮ったと思います。働きは血液中のいらないものをおしっことして出していくといった重要な働きがあります。よって腎臓が悪くなると血液を綺麗にできないため、尿毒症などの病気となり、大変なことになります。皮質の部分にはこの血液を濾過するボーマンのうと毛細血管がまとまって球状になった糸球体と呼ばれる構造(あわせてマルピーギ小体)が見られます。下の写真の真ん中に写っているのがたぶん糸球体だと思います。この構造において血液が濾過され、原尿(おしっこのもと)が作られますが、この中にはブドウ糖などの大切なものが含まれていますので、この原尿中の必要なものは細尿管の中を通るうちに血管の方に再吸収されていきます。その結果尿ができ、腎盂へたまり、輸尿管を通って膀胱へいき、やがて排出されます。
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皮膚断面(対物4倍 接眼10倍)
皮膚の断面です。皮膚は体表面を覆って、外部からの雑菌の進入を防いだり、乾燥から守ったりしています。構造は外から角質層・表皮・真皮・皮下組織からなり、表皮の部分は上皮組織から、真皮は結合組織からなり、真皮の中には様々な感覚器官や毛根などが存在しています。
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肺断面(対物4倍 接眼10倍)
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肺断面(対物10倍 接眼10倍)
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肺の断面写真です。写真からも分かるとおり肺というのはほとんど空気です。小さな袋(肺胞)の集まりで、毛細血管が分布していて、ここで空気中の酸素が血液に、血液中の二酸化炭素が空気へと移動します。血液中で実際に酸素を運搬するのは赤血球で、その中に存在する血色素(ヘモグロビン)が酸素と結合します。このヘモグロビンには鉄が含まれているため、鉄の摂取量が少ないとヘモグロビン量が減り、貧血になったりします。