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結果

1.月ごとの個体数の変化

個体数は生け捕りワナでの捕獲個体数と大きな違いはない(中川 1984)ため、ここでの個体数は生け捕りワナによる捕獲個体数を用いた。図5は雄と雌の捕獲個体の出現と消失の様子を示し、影の部分は幼体・亜成体を示している。個体数の変化は、雌雄とも繁殖期の終わりに増加し、夏場に減少していき、再び11月に増加するといったパターンを示す。春と秋の個体数の増加は幼体・亜成体の出現と、移入個体が多くなるためである。
 まず雄の個体数の変化についてみていく(図5)。1985年の4月は雄は7個体と少ないが、5月になると個体数が急増する。その後夏場(5月・7月・8月)に個体数が段々と減少し、9月の繁殖期に再び急増する。10月になると個体数が急減し、最低になる。11月になると急増し、9月の個体数まで回復する。1986年の4月は1985年とほぼ同じ個体数で、このうち2匹が越冬個体で、残り6匹は11月から4月にかけて移入してきた個体である。その後5月・6月と個体数が増加し、個体数のピークは6月にある。1985年では個体数のピークは5月にある。その後夏場に個体数が減少するが、夏場の個体数は1985年に比べ多くなっている。1986年の9月においても個体数の増加が見られる。そして1985年と同様に10月に個体数が急減する。
 1985年の5月および1986年の5月・6月の個体数の急増は幼体・亜成体の出現と多くの移入個体があったためで、その後の夏場の個体数の減少は移入個体よりも移出個体が多かったためである。9月に両年とも個体数が急増するが、これはこの時期に雌を探して調査地に入ってきた個体が捕獲されたものと考えられる(「雄の月ごとの行動圏の変化」を参照)。10月の個体数の急減は、9月に入ってきた個体のほとんどが消失したためである。
 次に雌の個体数の変化についてみてみる(図5)。1985年の4月には11個体で、成体の数では雄と同じである。5月になると、個体数が増加し、6月にピークがある。その後同じ割合で減少していき、授乳期の10月に最低になる。11月になると個体数は急増する。1986年の4月は1985年よりも個体数が多く、5月になっても個体数は増加せず、6月にピークがある。その後減少していくが、9月に再び個体数が増加し、11月に再び減少するが、1985年に比べて約3倍の個体数である。
 両年の春の個体数の増加は幼体・亜成体の出現のためだが、1986年の6月の個体数の急増はその大部分が移入個体によるものである。1986年は1985年と比べ、4月・5月に捕獲された個体が多く消失しており、6月の定住個体の数が少ないため、多くの個体が移入してきたと思われる。1986年の4月の捕獲個体のうち、1985年の11月からの越冬個体は4匹で、1985年の12月から1986年の4月にかけて移入してきた個体は9匹捕獲された。1985年では夏場に個体数が同じ割合で減少していくが、これは消失個体の数に比べ、移入個体の数が少なかったためであり、1986年の9月の個体数の増加は、移入個体が増加したためである。この1985年に比べ、1986年の個体数が多いことは雄の変化と同じ傾向を示している。
 雄と雌は上記のように大体同じパターンを示すが、詳しく見てみると、雄は雌に比べ移入・移出個体の数が多く、特に9月の交尾期において雄では多くの移入が見られ、その個体は10月には移出する。これに比べ雌では雄ほど顕著な変化はない。

論文図表

論文図表

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