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5.行動圏の利用法について

 図9は1986年の7月から9月までの足跡法によって多くの足跡地点が得られ、1日ごとの行動圏を描くことのできた個体について、1日ごとの行動圏を重ね合わせた7日間の行動圏の内部構造を示す。ここでは、7日間のうち4日以上の重複のあった地域(利用率約60%)と3日以上重複した地域(約40%)・2日以上(約30%)・1日のみ利用(約10%)の4つに行動圏の利用の仕方を分けた。
 アカネズミは行動圏すべてを均等に利用しているのではなく、よく利用している地域をその行動圏の中に持っていることが分かる。また毎日広く行動するわけではなく、ほとんど行動しない日も見られた。雄と雌で行動圏の利用の仕方にあまり違いはない。また7月(雌雄とも非繁殖状態)・8月(雄のみ繁殖状態)・9月(雌雄とも繁殖状態)の3ヶ月間の行動圏の利用法はどれも同じような様子であった。調査地内には3本の自然観察歩道があるが、行動圏はその歩道を横切っている。しかしながら、よく利用する地域が歩道を横切っている例は少ない(7月の2100オスのみ)。この個体についても、行動圏の核の部分(core area)は歩道を越えていない。
 このようなしっかりとした行動圏はその例数が少ないので、後の行動圏の分析は7日間の行動圏を用いて行った。

論文図表

論文図表

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