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10.行動圏の大きさ

 行動圏の大きさは、7日間の足跡法において5点以上の地点が得られた個体について最小面積法を用いて計算した。また調査地周辺部の個体については、正確な行動圏を示さないと考えられるので除いた。月ごとの行動圏の大きさの変化(表2)は、その標本数が少ないので繁殖状態によって期間を3つに分けて調べた。(1)雌のみが繁殖状態(授乳中)の5月。(2)雌雄ともに非繁殖状態の6月から8月。(3)雌雄ともに繁殖状態(雄:睾丸下降状態、雌:膣開口状態および妊娠中・授乳中)の9月と10月。
 雌のみが繁殖状態の5月は雄が平均1062.5平方メートルで、雌が1250.0平方メートルであった。また最大の行動圏は雌雄とも1600平方メートルであった。6月から8月の非繁殖期は雄では平均で約250平方メートル増大する。また最大の行動圏の大きさと最小の行動圏の大きさも5月よりも増大した。雌では5月とほとんど行動圏の大きさに変化がない。9月から10月の雌雄とも繁殖状態の時期には、非繁殖期よりも行動圏が増大している。また最大値と最小値の間の差が小さくなった。雌でも非繁殖期に比べると行動圏が増大する。また5月を除き雄の方が雌よりも行動圏の大きさがわずかに大きい。行動圏の大きさと体重及び定住性の間には見つけうる違いはなかった。しかしこれらの値は標本数が少ないためアカネズミの行動圏の一般的な大きさを示すかどうかは疑問である。

論文図表

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